自閉症セミナー2015に参加して

【日時】
11月21日(土)10時〜15時半
【場所】
水戸市ボランティア会館
【主催】
茨城県自閉症協会
【テーマ】
自閉症スペクトラム児者の心を育てる教育〜幼児期から成人期以降まで〜
【講師】
河島淳子氏(トモニ療育センター所長)
高橋知恵子氏(トモニ療育センター副所長)
【概要】
河島先生が成人の入所施設で取り組まれている課題学習の様子を紹介され、幼児期に比べて指導が難しい成人の指導のコツを講演されました。

※少しでも多くの方に理解して頂くため、資料より抜粋させて頂きました。

第1章 自閉症スペクトラム児者の療育と教育  〜幼児期は、学資期〜

1. はじめに

母が変われば、子は必ず変わる。

自閉症スペクトラム障害の子どもは、幼児期より、積極的に個別学習を通じて「よく学ばせ、よく遊ばせ、良く手伝わせる」ことで、・・やがて自分から「よく学び、よく働き、良く遊ぶ」ように変身していく。

生きる上で必要な基本的なことを課題学習として、早朝ウォーキング、マラソンをベースに幼児期・学習期を通じて継続していった時、少しずつ自立していき、家族は共に生活を楽しみ、生きていく力を身につけていくことができる。

2.私の子育て

(1)乳幼児期の状態像

自閉症児の3つの特徴的症状

  1. 目を合わせない、笑わない、なつかない、呼んでも知らん顔等(対人関係の障害)
  2. 言葉が出ない、言葉が遅れる、会話が出来ない(コミュニケーション障害)
  3. 特定の物に固執、変化を嫌う(こだわり)

・・探し求め出会った本は「知恵遅れのこの生活指導」(ヴィゴッキー)だった。

(2)発達障害の子どもの示す障害と方針(ヴィゴッキーの考え方がベース)

一次的障害・・・
脳の器質的・機能的障害(認知の障害)
二次的障害(症状)・・・
行動障害(コミュニケーション障害、社会性障害、こだわり)
学習障害(書字困難、読字困難、計算困難)
三次的障害(症状)・・・
未学習
身辺の自立が出来ない
強度行動障害、かんしゃく、甘え、わがまま(性格)
偏食、虚弱、虫歯、肥満、便秘(身体)

※この二次的三次的障害は、適切な療育(取り組み)によって改善・解決できる。

(3)できるだけの自立を目指して(実践)

見ようとしない、やろうとしない子の背後から両手を添えてあげて、数字盤に同じ数字カードを1から100まで順番に置かせた。こうして、全介助で並べさせ続けていると、数字を覚えただけではなく、「座る、待つ、手を膝にする、模倣をする、やり遂げる、指示に従って学ぶ」等の姿勢も身についてきた。

(4)子供が育つ道筋(生涯人間発達論 服部祥子)

(5)療育と教育(実践と考察)

  1. 自閉症療育のメインテーマは、脳の機能障害(主に認知障害)に起因する「学習障害と行動障害」の克服にあると確信。
  2. 「遊び、学び、働き」で成り立つ生活  幼児期、学童期、成人期
  3. 「遊び、学び、働き」で成り立つ生活  幼児期、学童期、成人期
  4. 遊びでは自閉症児の子どもは導けない。
    • 自閉症スペクトラム障害児の場合は、上記のような発達はしていない発達障害児である。「幼児は遊びによって育てる」という常識が当てはまらない。
  5. 文字・数字の指導は幼児期から取り組む等14項目

(6)認知機能の未熟さ・未発達・不全への挑戦だった

(7)現在の息子の状態

3.トモニ療育センター

(1)家庭療育と母親

発達障害の子供が、「地域社会にあって豊かに自由に人間らしくい生きて行けるように」母親を支援し、家庭療育を支援する目的で1994年に設立した。

(2)自立を目指した具体的目標

読み書き計算の基礎学習と同時進行で家庭科技術(料理)を課題とし、同時に職業技術(ビーズのれん作り、クロスステッチ刺繍、ボールペンの組み立て、箱作り、折り紙)などに取り組めば幼児から青年まで長期にわたって一貫した指導が継続できる。

(3)見通しをもって育てる ─幼児期・学童期までの育ちようによって、思春期の状態が決まる─

(4)子供の把握のための検査

詳細な問診票、自閉症児を詳細に深く観察することからトモニ療育センターでの療育が始まる。

4.学習障害(省略)

5. こだわり:

自閉症の子どもは決まったやり方、儀式に安心を求める。・・・こだわりの意味を理解し、共感 する時、子供は信頼してついてきてくれるようになる。

6.パニック

7.行動障害

8.行動障害の人たちへの適切な向き合い方が豊かな心を育てる

・・・題行動やパニックを解決していくためには、相手を共感して、理解することが重要である。

コミュニケーションシーンの再現をし、やりとりを詳細に知る。先ず母の態度から変える。母が変われば子は必ず変わる。子供に指示に従ってやり遂げる力を付ける。・・・

信頼して希望を持って愛を込めて、諦めないで、見捨てないで向き合い続けられるように、支援していく。

9.成人期にある発達障害の方々への関わり

今でも多くの家庭が、自閉症の子供の深刻な行動障害に振り回されている。残念ながら学校でもそうである。・・・施設に暮らす方々の事を思うといつも思う。自閉症の人が大量の薬を飲んでいる姿を忘れられない。軌道修正が困難であっても、すでに幼児期や学童期を超え、大人になった人たちであっても、『失敗は成功の元』と、小さな変化や発達成長を敏感に日々見つめながら、ユーモアを持って、楽しみながら「知識ある愛」を増し加えながら共に歩んでいきたい。

数年前より私は入所施設にも出向き行動障害のある人たちに「検査と課題学習」を実施し、施設職員にその人を深く理解し共感して頂くように努めている。すべき課題は、幼児期も学齢期も成人期も同じである。生涯、人間は発達していく。

※第2〜5章は割愛させて頂きます。

〜青年期成人期の方々への取り組み〜

1.その人はどんな人なのか

本人の力を把握し、どのような教材の使い方が良いか決める。

2. それでも自閉症児は教育できる ─自閉症児は可能性を持っている─

  1. 教材と教え方の工夫をし、生きる上で必要な課題をわかりやすく繰り返し熟練するまで教える!
  2. 書き言葉は、心を育てる。理性を育てる。人間関係を確かなものにする。
  3. 行動障害を持つ青年期成人期の発達障害のある人にどうかかわるか。
    • 生活年齢が上がると体力があり、指導が極めて難しくなる。それでも、できるだけの自立をめざして、やり残してきた課題を具体的に取り組む。(課題の項目は同じ)

3.施設での取り組み

  1. 入所施設の行動障害を持つ人たちへの働きかけ
    • 施設職員の資質向上が利用者のよりよい状態を造りでしていき、施設を良くし、利用者のよりよい状態が、余裕を作り出し、豊かさや幸せ感を生み出していく。
  2. 施設の現状把握
    1. 解決できる点、改善できる点は何なのかを見極めて、出来ることから一つひとつ具体的に希望を持って「知識ある愛をもって行き届くように」取り組む。
    2. 利用者、施設職員、家族への積極的働きかけ
      • 忙しすぎる職員と暇すぎる職員!職員と利用者の時間感覚のずれがある。
      • こだわりや破壊行動や自傷、他害など問題行動にたいする考え方の見直しが必要である。それらで利用者は何をメッセージとしているのか。その人のこれまでの人生を問診表から詳細に把握する。
    3. 家族への理解と共感。・・・
    4. 居室の改善ができるなら、できるだけの創意工夫をしたい。
    5. その人を把握し、共感を持って理解するために、検査と課題学習のセッションをする。・・・
    6. 詳細な把握によって、得体の知れなかった利用者が、愛すべき純粋な健康な人であることが分かり、施設職員の警戒心や恐怖心が取り除かれ、支援員と利用者の人間関係が育ち、人間らしい生活が少しずつできるようになっていく。
    7. 知識ある愛を持って行動し、行き届いて関わること。言葉上の敬語や丁寧語だけでなく、心から敬意をもって、その方々に向き合い、自立できる取り組みを生涯にわたってやっていきたい。一日一日、今を生きる。等々。

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